落語
忘れ物の八五郎
2026.04.30
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落語・一席
高座本編
高枕:
えー、本日はお日柄もよく、
パン!と手を叩く音
大勢のお客様にお運びいただきまして、
誠にありがとうございます。(笑)
高枕:
座布団亭高枕でございます。
どうぞ、よろしくお引き立てのほどを。
深々と頭を下げる
高枕:
さて、私ども人間というものは、
いくつになっても、いや、
いくつになればなるほど、
困ったものでございますなぁ。(笑)
高枕:
ええ、何が困るかって、
『物忘れ』でございますよ。(笑)
皆さんも、お心当たりが
ございましょう?(笑)
高枕:
先日もね、うちの近所の
八五郎(はちごろう)ってぇ男がおりまして、
これがまた、筋金入りの
忘れん坊でしてね。(笑)
舞台が明るくなる
高枕:
ある日の朝、
八五郎が起き出して、
まず何をするかってぇと、
『おい、俺のメガネはどこだ?』(笑)
高枕:
おい、おい、おーい!
おっかぁ、俺のメガネは
どこに置いたんだい!(怒)
高枕:
あら、また始まったわね。
あんた、そこら辺に
置いたんじゃないの?(呆)
高枕:
探したって見つからねぇから
聞いてんだろ!
ガタガタと部屋中を探し回る音
まったく、これじゃあ
新聞も読めやしねぇ!(怒)
高枕:
八五郎、仏壇の上から
箪笥の引き出しまで、
ひっくり返して探し回る。(笑)
高枕:
どこにもねぇ、
誰かが隠したのか?(疑)
高枕:
隠すわけないでしょ。
あんた、鏡見てごらんなさいよ。(呆)
高枕:
八五郎、言われるがままに
手鏡を覗き込みますとね……
シーンと静まり返る
高枕:
……あ!
頭をガシッと掴む音
あ、あれ?
ここに、あった……(驚)
高枕:
そう、メガネは八五郎の
頭の上にちょこんと
乗っていたんでございます。(笑)
客席から笑い声
高枕:
ま、これくらいなら
まだ可愛げがあるんですがね。(笑)
もっとひどいのが、
人の名前を忘れる時ですよ。(笑)
高枕:
ある日、八五郎が町を歩いていると、
向こうから昔馴染みの友人が
やって来た。(笑)
高枕:
お、おぅ、おぅ!
久しぶりじゃねぇか!
えーと、なんだい、
お前は、えーと……(焦)
高枕:
なんだい、八っつぁん。
忘れちまったのかい?(笑)
高枕:
いや、まさか!
忘れちゃいねぇよ!
あー、あれだろ?
お前は、そう、熊五郎!(笑)
高枕:
誰が熊五郎だよ!(怒)
俺は寅次郎だよ!
ったく、ひでぇな、八っつぁん!(怒)
高枕:
八五郎、赤っ恥をかきまして、
『いや、なんせ最近は
記憶力がなぁ……』なんて、
ぶつぶつ言いながら帰って来る。(笑)
高枕:
で、家に着くと、今度は
台所に入っていったんですよ。(笑)
何やらゴソゴソと
冷蔵庫を開けましてね。(笑)
冷蔵庫の開く音
高枕:
えーと……
冷蔵庫の中を覗き込む
なんだっけ、何を取りに来たんだっけ?(困)
高枕:
八五郎、冷蔵庫を前にして
腕を組み、唸り始める。(笑)
高枕:
うーん……
冷蔵庫の扉を閉める音
高枕:
一旦、扉を閉めて、
考え込む。(笑)
高枕:
ああ!そうだ!
卵だ、卵!(閃)
高枕:
で、またガバッと
冷蔵庫を開ける。(笑)
冷蔵庫の開く音
高枕:
えーと……
再び冷蔵庫の中を覗き込む
あれ?何を取りに来たんだっけ?(困)
高枕:
この繰り返しで、冷蔵庫の開け閉めが
五回、六回と続く。(笑)
高枕:
あんた、いつまで
冷蔵庫とにらめっこしてるのさ!(呆)
高枕:
いや、それがなぁ、
何を取りに来たか、
すっかり忘れちまって……(困)
高枕:
結局、八五郎、
『ま、いっか!』なんて言いながら、
卵とは全く関係のない
冷たいビールを取り出して、
プシュッと音を立てて
飲み始めちまったんでございます。(笑)
客席から大きな笑い声
高枕:
いやぁ、物忘れってぇのは
困ったもんですが、
時にゃこうして、
笑い話になるもんでございますなぁ。(笑)
高枕:
最近はAIなんてぇ便利なものが
出てきて、なんでも覚えちゃって
忘れやしねぇなんて言いますけどね。
しみじみと
高枕:
この八五郎みたいな
人間臭い忘れん坊も、
なんだか、こう……
可愛らしく思えてきますでしょう?(笑)
高枕:
AIには覚えられない
『うっかり』から生まれる
温かい笑いってぇのも、
捨てたもんじゃございませんや。(笑)
高枕:
えー、本日はこれにて。
ニッコリと
座布団亭高枕でございました。
ありがとうございます。(笑)
パン!と手を叩く音
客席から拍手喝采
🎯 このコーナーの狙い
このコーナーは、「物忘れ」という普遍的なテーマを通して、誰もが共感できる日常の滑稽さ、人間味あふれる温かい笑いを観客に提供することを狙います。古典落語が描いてきた庶民の暮らしの中の「おかしみ」を現代に再現しつつ、AIが普及する現代において、人間特有の「うっかり」が生み出す価値、すなわち「AIにはできない笑い」を浮き彫りにする実験的要素も含んでいます。特に、観客が自身の経験と重ね合わせることで、より深く感情移入し、共感の笑いを誘うことを目的としています。
※ 本コンテンツはエンターテインメントおよび研究を目的とした創作台本です。実在の人物・団体とは関係ありません。
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