落語
セルフレジとご隠居さん
2026.04.16
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落語・一席
高座本編
湯呑:
えー、本日はお日柄もよく、
皆様方にはお変わりなく
お過ごしでございましょうか(笑)」
お茶をすする音
湯呑:
わたくし湯呑、
座布団亭の五番弟子でございます(笑)」
湯呑:
いやぁ、最近は本当に
便利になりましたねぇ(笑)」
湯呑:
昔は買い物と言えば、
八百屋さんにお魚屋さん、
お米屋さん、お豆腐屋さん、
と、軒を連ねたもんでしたが(笑)」
湯呑:
今じゃスーパーに行けば、
何でも手に入りますからねぇ(笑)」
湯呑:
そして、レジもまた
進化しましてね(笑)」
湯呑:
『セルフレジ』
なんてものが出てきましてねぇ(笑)」
湯呑:
自分で商品を読み込ませて、
自分で会計を済ませるという(笑)」
湯呑:
これがまた、
慣れないうちは一苦労でございまして(笑)」
湯呑:
先日、わたくしがスーパーで
買い物を済ませた後のこと(笑)」
湯呑:
セルフレジのコーナーに、
えらく難儀している
ご隠居さんがいらっしゃいましてねぇ(笑)」
トントントン、と扇子で膝を叩く
湯呑:
そのご隠居さん、
カゴいっぱいの野菜と魚を
レジの台に乗せては
首を傾げていらっしゃる(笑)」
湯呑:
見ると、レジの画面には
『商品をスキャンしてください』
と、大きく出ている(笑)」
湯呑:
ご隠居さん、
まずは大根を持ち上げては、
バーコードの部分を
機械にかざすのですが(笑)」
ピッ、という音がしない
湯呑:
何度やっても
『ピッ!』という音がしない(笑)」
湯呑:
おいおい、なんだい、
これかい?(驚)」
湯呑:
ここにかざせば
いいんだろう?(怒)」
大根を振り回す
湯呑:
大根を縦にかざしたり、
横にかざしたり、
しまいには斜めにかざしたり(笑)」
湯呑:
機械の方も
困り果てたような顔で
黙りこくっている(笑)」
湯呑:
おい、聞こえないのかい!(怒)
湯呑:
儂は急いでるんだよ!(怒)
レジの機械をトントンと叩く
湯呑:
ご隠居さん、
しまいには機械に向かって
怒鳴りつけ始めた(笑)」
湯呑:
まさか、これも
ワシをからかってるのかい!(怒)」
湯呑:
隣のレジは
ちゃんと『ピッ』って
言ってるじゃねぇか!(怒)」
湯呑:
後ろに並んでいた
若いお嬢さんが
クスクスと笑いをこらえている(笑)」
湯呑:
そこへ、慌てた様子の
店員さんが駆け寄ってきましてね(笑)」
湯呑:
お客様、
何かお困りですか?(笑)」
湯呑:
おお、兄ちゃん!
見てみろい!
この機械が言うことを聞かねぇんだ!(怒)」
湯呑:
あぁ、失礼いたしました。
少々、コツがいるんです(笑)」
湯呑:
店員さんが大根を手に取り、
ひょいっとかざすと、
見事に『ピッ!』と音が鳴る(驚)」
湯呑:
おお!
鳴った!鳴った!(驚)」
湯呑:
それから店員さんが
手伝ってくださって、
何とか商品のスキャンは
終わったのですが(笑)」
湯呑:
今度は支払いですよ(笑)
湯呑:
画面には
『お支払い方法を
お選びください』と出る(笑)」
湯呑:
ほう、これかい(驚)
湯呑:
えーと、現金と、
カードと、
あと何だい、これは?(困)」
湯呑:
ご隠居さん、
指で画面をツンツンと触っては、
『どれにしようか』と
悩んでいるご様子(笑)」
湯呑:
『Suica』だの
『PayPay』だの、
見慣れない文字が並んでいるもんですから(笑)」
湯呑:
儂は現金だ!
現金じゃ!(怒)」
湯呑:
ご隠居さん、
財布から小銭をジャラジャラと
取り出しては、
ゆっくりと投入口に入れ始めた(笑)」
チャリン、チャリンと小銭の音
湯呑:
一枚、また一枚と
数えるように入れるもんですから、
時間がかかる(笑)」
湯呑:
機械の方も
『早く入れろ』とばかりに
『お金を投入してください』
と、何度も促している(笑)」
湯呑:
うるさい!
今、入れてるだろうが!(怒)」
湯呑:
ようやく支払いも終わり、
レシートが出てくると(笑)」
湯呑:
やれやれ、
とんだ骨折り仕事だったぜ(笑)」
湯呑:
もう二度と
こんな機械、使うもんか!(怒)」
湯呑:
そう言って、
ご隠居さんは
足早に去っていかれました(笑)」
湯呑:
その後ろ姿を見て、
わたくしは思いましたねぇ(笑)」
湯呑:
便利な世の中になったと
言いましても、
やはり人情が一番でございます(笑)」
湯呑:
人の手で、
心を込めてねぇ(笑)」
湯呑:
えー、お後がよろしいようで(笑)
🎯 このコーナーの狙い
このコーナーは、現代社会で誰もが経験しうる「あるある」な情景を切り取り、落語という古典芸能のフィルターを通してユーモラスに描くことを狙っています。特に、新しいテクノロジー(セルフレジ)と、それに戸惑う人々(ご隠居さん)とのギャップから生まれる「共感とズレの笑い」を主眼に置いています。古典落語でいうと、道具屋や長屋の日常を描いた噺のように、身近な出来事を誇張し、登場人物の人間味溢れる反応で聴衆を惹きつけるタイプです。機械の無機質さと人間の感情の対比が、噺の面白さを引き立てます。
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