落語
尾ひれの壺
2026.04.05
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落語・一席
高座本編
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ええ、皆さん、ようこそおいでなすった。(笑)
扇子をパンと叩く音
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真打の拍手でございます。(感)
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さて、本日のお題は『噂話』でございます。(感)
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あっという間に尾ひれがついて、(驚)
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とんでもねぇ話になるもんでございますなぁ。(感)
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昔から、噂の真偽を確かめずに、(笑)
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話に花を咲かせる連中が、(笑)
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どこにでもいるもんでして。(笑)
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そんな一席を、どうぞ。(笑)
三味線の軽快な音色
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ある長屋に、八五郎ってぇ男がおりましてね。(感)
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これがまた、とんだお人好しで。(笑)
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ある日、庭の手入れをしてましたら、(感)
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使い古しの植木鉢が割れてしまった。(困)
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やれやれ、これどうすっかな。(困)
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土に帰るもんでもねぇし、(困)
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粗大ごみに出すのも面倒だ。(困)
頭を掻く八五郎
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そうだ!庭の隅っこに、(ひらめき)
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ちょっと穴掘って埋めちまえば、(ひらめき)
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邪魔にもならねぇし、見た目も良いや。(笑)
スコップでシャベルを掘り始める音
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八五郎は、割れた植木鉢の破片を、(感)
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大事そうに抱え、庭の隅で、(感)
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せっせと穴を掘り始めたんでございます。(感)
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そこへ、たまたま通りかかったのが、(感)
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向かいの熊さんでございます。(感)
熊さん、首をかしげる
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おや、八つぁん、何してんだい?(驚)
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八五郎は気づきませんで、(感)
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夢中で穴を掘っております。(感)
熊さん、そっと覗き込む
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ん?何か大事そうなもん、(驚)
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抱えて埋めてるみてぇだな。(驚)
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熊さん、面白がって、(笑)
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大家さんのところへ飛んでいきました。(走る音)
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大家さん、大家さん、大変ですぜ!(興奮)
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なんだい、熊さん、騒々しいねぇ。(怒)
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八つぁんが、庭で何かを、(興奮)
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大事そうに埋めてましたぜ!(驚)
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壺みてぇなもんを、抱えてましたぜ!(驚)
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なんだって!?壺だと!?(驚)
大家さん、目を丸くする
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こりゃ、隠し財産でも見つけやがったな!(確信)
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よし、ご隠居さんに相談だ!(意気込み)
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大家さんは、ご隠居さんの家へ、(感)
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飛んでいきました。(走る音)
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ご隠居さん、ご隠居さん!(興奮)
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おや、大家さん、どうしたね?(感)
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大変でございます!(興奮)
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八つぁんが、庭に先祖代々の、(興奮)
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とんでもねぇ家宝の壺を、(興奮)
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埋めたんでございますよ!(驚)
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ほう、八つぁんがな。(感)
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家宝の壺を埋めたと。(感)
ご隠居さん、顎を撫でる
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それは面白い。詳しく聞かせておくれ。(笑)
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大家さんの話は、熊さんの話に、(感)
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さらに尾ひれがつきまして、(笑)
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『とんでもねぇ家宝の壺』に、(驚)
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化けてしまったわけでございます。(笑)
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この話は、あっという間に、(感)
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長屋中に広まりました。(感)
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聞いたかい?八つぁんが、(驚)
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金銀財宝の詰まった壺を、(驚)
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庭に埋めたんだってさ!(驚)
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いやいや、あれは昔、(驚)
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盗んだ金目のもんだろ!(疑)
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何?盗んだものだって?(驚)
長屋中がざわめく
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長屋の衆は、こぞって、(感)
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八五郎の家の周りに集まり、(感)
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ひそひそと、噂話に興じております。(ひそひそ声)
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ついに、大家さんが音頭を取り、(感)
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八五郎に詰め寄りました。(怒)
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八つぁん!おめぇ、いい加減にしろ!(怒)
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何埋めたんだ!正直に言え!(怒)
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八五郎は、いきなりの剣幕に、(感)
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目を白黒させております。(驚)
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へぇ?大家さん、何でやんす?(困)
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埋めたって、アレでやんすか?(困)
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アレとはなんだ!壺だろ!(怒)
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とんでもねぇ家宝の壺を、(怒)
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隠しやがったな!(怒)
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へぇ?家宝?(驚)
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あぁ、あれは、割れて捨てた、(あっけにとられ)
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植木鉢の破片でさぁ。(笑)
シーンと静まり返る
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…植木鉢の、破片だと?(呆然)
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…ほう。(呆然)
長屋中の人々が、顔を見合わせる
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ええぇぇぇっ!?(驚)
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ええ、花を植えてた鉢が、(笑)
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不注意で割れちまいまして。(笑)
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土に埋めときゃ、そのうち、(笑)
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土に還るだろうと。(笑)
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エコでやんすよ、エコ。(笑)
大家さん、ご隠居さん、顔を見合わせて
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まったく、噂ってのは、(呆れ)
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恐ろしいもんでさぁ…。(笑)
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ああ、人間、早とちりは、(感)
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いかんなぁ…。(笑)
パン!と扇子を叩く音
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まことに、人の口に戸は立てられぬ、(感)
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というもんでございますねぇ。(笑)
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八五郎にとっては、ただのゴミの処分が、(感)
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長屋を巻き込む大騒動に、(驚)
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発展するとは、世にも奇妙な、(笑)
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噂話でございました。(笑)
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お後がよろしいようで。(笑)
客席から大きな拍手
三味線が鳴り響く
🎯 このコーナーの狙い
このネタの「狙い」は、人間の「噂好き」という普遍的な心理と、そこから生じる「勘違い」や「尾ひれ」が、いかに滑稽な状況を生み出すかをコミカルに描くことです。笑いのタイプとしては、登場人物たちの早とちりや、話のスケールがどんどん大きくなっていく過程での「状況のずれ」から生まれる「ズレの笑い」や「滑稽さ」を狙っています。古典落語との関連では、「時そば」や「寿限無」のような、一つの事象が変形していく様を描く噺や、「目黒のさんま」のような、庶民の勘違いや権威ある人物の滑稽さを描く噺に通じる構造を持たせています。特に、古典落語の「目黒のさんま」では、庶民の食べ物が高級料理と勘違いされる状況を描きますが、本作では、ゴミが家宝と勘違いされるという逆転の構造で、噂の力を表現しています。
※ 本コンテンツはエンターテインメントおよび研究を目的とした創作台本です。実在の人物・団体とは関係ありません。
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