落語
鏡の中の異邦人
2026.04.18
閲覧数: 1,068
落語・一席
高座本編
高枕:
えー、皆様、本日はようこそお越しくださいました(笑)。
パチンと扇子を叩く音
高枕:
座布団亭高枕でございます(笑)。
高枕:
いやぁ、最近はねぇ、
美容室なんてものが
随分と増えましてねぇ(笑)。
高枕:
昔は床屋さんと決まってましたけど、
今はもう、
老いも若きも美容室でございますよ(笑)。
高枕:
ところがこの美容室ってのが、
なかなかどうして、
一筋縄ではいかないもんでねぇ(笑)。
高枕:
何がって、
まずはあの、会話ですわな(笑)。
高枕:
『今日はどうされますか?』
『何かお困りですか?』なんて聞かれてもねぇ、
こっちはただ切りたいだけなのに(笑)。
高枕:
『お任せで』なんて言おうもんなら、
そりゃもう、
とんでもない事になる(笑)。
高枕:
今日はそんな、
『お任せ』が招いた
悲劇のお話を一席(笑)。
高枕:
ご存知、
うちの熊さんでございますが、
どうにも髪が伸びてきてね(笑)。
客席から笑い声
高枕:
『おい、八っつぁん、
俺もたまには
美容室とやらへ行ってみるか!』(笑)
高枕:
なんて言って、
意気揚々と出かけたはいいが、
店の前で立ち止まる(驚)。
熊さんが店の前で固まる様子
高枕:
『なんだい、このオシャレな店は…
俺なんぞが入っていいのかい?』(驚)
高枕:
恐る恐る中に入ると、
若い、いかにも今風の
お兄さん美容師が出てきましてね(笑)。
高枕:
いらっしゃいませ!
本日はどうされますか?(笑)
高枕:
ああ、ええと…
その、なんだ…
お任せで!(笑)
高枕:
熊さん、
普段は偉そうな口を利くくせに、
こういう時だけ猫を被る(笑)。
美容師が熊さんを席に案内する
高枕:
お任せですか!
かしこまりました!
それではシャンプーからどうぞ!(笑)
高枕:
シャンプー台に案内されてね、
寝かされてる間に
世間話が始まる(笑)。
高枕:
お仕事は何をされてるんですか?(笑)
高枕:
ああ、ええと、
ちょっとした商売を…(笑)
高枕:
へぇー!
何か趣味とかありますか?(笑)
高枕:
趣味ねぇ…
酒と…
あとは、昼寝くらいで…(笑)
高枕:
熊さん、
話の引き出しが少なくてね、
しどろもどろでございます(笑)。
シャンプーの泡が顔にかかる
高枕:
うっ…
目をつぶったまま)(汗
高枕:
お湯加減はいかがですか?(笑)
高枕:
ちょ、ちょうどいいです…
小声で)(笑
高枕:
さて、カットが始まりましてね。
鏡越しに、
美容師のハサミが動くのが見える(笑)。
ハサミの軽快な音
高枕:
お客様、
最近流行りのスタイル、
試してみませんか?(笑)
高枕:
は、はぁ…
お任せで…(笑)
高枕:
どんどん髪が短くなっていく。
最初はいいかと思ったが、
どうも雲行きが怪しい(驚)。
熊さんの顔がだんだん引きつっていく
高枕:
あ、あの、
ちょっと…
短すぎるような…(泣)
高枕:
いえいえ!
これがまた、
お客様に絶対お似合いになりますよ!(笑)
高枕:
美容師のお兄さん、
自信満々で
どんどん切り進める(笑)。
高枕:
熊さん、
鏡に映る自分を見て、
だんだん不安になってくる(怖)。
高枕:
なんか…
俺じゃないみたいだ…(泣)
美容師が最後の仕上げをする
高枕:
はいっ!
完成です!
いかがですか、お客様!(笑)
美容師が鏡を差し出す
高枕:
熊さん、
鏡を見て、
思わず絶句(驚)。
熊さんの口がポカンと開く
高枕:
こ、これ…
俺…!?(驚)
高枕:
そこに映っていたのはね、
まるで前衛芸術のような、
奇抜な髪型の男(驚)。
高枕:
頭のてっぺんはツンツンに立って、
サイドはガッツリ刈り上げ、
まるでタワシのよう(笑)。
高枕:
すごくお似合いですよ!
トレンドの最先端です!(笑)
高枕:
あ、ああ…
ありがとうございます…
引きつった笑顔で)(笑
高枕:
熊さん、
これ以上は無理だと悟り、
そそくさと会計を済ませて店を出た(泣)。
熊さんが肩を落として店を出る
高枕:
店を出て、
ショーウィンドウに映る
自分の姿を見て、また驚く(驚)。
高枕:
おいおい、
これじゃあ、まるで…
鏡の中の異邦人じゃねぇか!(泣)
高枕:
家に帰って、
奥さんが熊さんの顔を見るなり、
ひっくり返りそうになったそうで(驚)。
高枕:
あら、あなた!
その頭、どうしたの!?(驚)
高枕:
いや、あの、
お任せしたら…(泣)
高枕:
まるで、タワシが
頭に乗ってるみたいじゃない!(怒)
高枕:
タ、タワシ…!?(驚)
高枕:
次の日、熊さんはね、
深々と帽子を被って
出かけたそうでございます(笑)。
高枕:
それ以来、
美容室で『お任せ』なんて言葉は、
二度と使わないと誓ったとか(笑)。
高枕:
ええ、そして、
鏡を見るのが怖くなっちまってね、
顔を洗う時も、
目を閉じていたそうでございます(笑)。
パン!と扇子を叩き、深々とお辞儀をする
高枕:
お粗末様でございました(笑)。
🎯 このコーナーの狙い
このコーナーでは、現代社会にありがちな「あるある」なシチュエーションを題材に、古典落語の語り口や人物描写の技法を応用した新作落語を披露することで、聴衆に共感と笑いを届けます。特に「美容室での会話の苦痛」や「注文と違う仕上がり」といった、誰もが一度は経験したことのあるであろう微妙な感情を、落語ならではのユーモアと誇張で描き出し、現代の聴衆にも親しみやすい笑いを狙っています。古典落語の「やぶ医者」や「時そば」のように、日常の出来事を切り取って滑稽さを引き出す手法との関連性を持たせています。
※ 本コンテンツはエンターテインメントおよび研究を目的とした創作台本です。実在の人物・団体とは関係ありません。
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