落語
夢の億万長者(おくまんちょうじゃ)
2026.09.29
閲覧数: 1,492
落語・一席
高座本編
小判:
えー、皆様、ようこそお運びくださいました。座布団亭小判でございます。(一礼)
会場から温かい拍手が起こる
小判:
さて、皆様、夢はございますか?(にこやかに)
小判:
ええ、夢と申しましても、
小判:
寝て見る夢ばかりではございませんよ。(笑)
小判:
将来の夢、希望の夢、
小判:
それから、そう、ちょっとした宝くじの夢、
小判:
なんてのもございますね。(爽やかに)
小判:
わたくしも先日、つい出来心で一枚、
小判:
なんてね。ええ、買ってみたものの、
小判:
結果を見るまでは、まさに捕らぬ狸の皮算用。(笑)
小判:
これがまた、楽しいんでございます。(楽しそうに)
小判:
今日はそんな、夢見る庶民の、
小判:
ささやかな、それでいて壮大な妄想のお噺でございます。(微笑んで)
小判:
どうぞ、ごゆるりとお聞きくださいませ。(一礼)
三味線の軽快な音が鳴り響き、止まる
小判:
ある日のこと、
小判:
ご隠居さんの家に、
小判:
与太郎さんがやってまいりましてね。(語りかけるように)
小判:
ご隠居さん、ご隠居さん!(興奮して)
小判:
おう、与太郎か。どうした、そんなに息を切らして。(落ち着いて)
小判:
へへっ、実は、これをご覧あれ!(得意げに)
与太郎が懐から何かを取り出す仕草をする
小判:
なんだい、そりゃ。(興味津々に)
小判:
へい、宝くじでございます!(満面の笑みで)
小判:
おやおや、与太郎も物好きだねぇ。(呆れたように)
小判:
いくら当たったって、どうせ三千円がいいとこだろうに。(笑)
小判:
いやいや、ご隠居さん、
小判:
今回は違いますよ!(力強く)
小判:
この与太郎、夢を見ましたんで!(真剣な顔で)
小判:
ええ、白蛇が七匹、
小判:
金の卵を産む夢でございますよ!(自信満々に)
小判:
そりゃまた、ずいぶんと景気のいい夢だねぇ。(感心したふりをして)
小判:
そうでしょ?(得意げに)
小判:
だから、これはきっと、
小判:
一等前後賞、三億円でございますよ!(確信して)
小判:
へえ、三億円ねぇ。(鼻で笑いながら)
小判:
で、もし当たったら、どうするんだい?(面白がって)
小判:
へへっ、それがね、
小判:
お花と二人で、もう話はつけてあるんです。(嬉しそうに)
小判:
ほう、お花さんも乗り気かい?(驚いて)
小判:
与太郎さん、急いで家に帰りまして、
小判:
お花さんに、ご隠居さんとの話をしますと、
小判:
お花さんも目を輝かせましてね。(楽しそうに)
小判:
ええ、与太郎さん、もし三億円当たったら、(うっとりして)
小判:
まずは、このボロ屋を建て替えて、(夢見がちに)
小判:
二階建ての立派な御殿にしましょうよ!(興奮して)
小判:
そうだな!縁側には池を作って、錦鯉を泳がせるんだ!(大きく頷いて)
小判:
あら、素敵!(拍手して)
小判:
それから、そうだ、
小判:
お前には着物をたくさん買ってやるぞ!(気前よく)
小判:
まあ、嬉しい!(はにかんで)
小判:
でも、与太郎さんこそ、
小判:
美味しいものをたくさん食べて、
小判:
立派な羽織袴を着てくださいね。(優しく)
小判:
おうよ!毎日、鯛の刺身だ!(笑)
小判:
毎日じゃ飽きますわ!(笑)
小判:
二人の妄想は、止まるところを知りません。(語りかけるように)
小判:
そうだ、ご隠居さんも言ってたが、
小判:
三億円もあれば、店も出せるぞ!(ひらめいて)
小判:
まあ、どんなお店を?(ワクワクして)
小判:
そうだなあ…そうだ、寿司屋だ!(勢い込んで)
小判:
あら、いいわねぇ!私が女将さんよ!(嬉しそうに)
小判:
いや、お前は裏方でいいんだ。(きっぱりと)
小判:
なんですって!(むっとする)
小判:
ワシが板前だ!(胸を張って)
小判:
あなたに、お寿司が握れるんですか?(呆れて)
小判:
そりゃ、今から習えば…(自信なさげに)
小判:
冗談言わないでください!(怒って)
小判:
それなら、私が仕切るわ!
小判:
与太郎さんは、店の前で客寄せでもしてなさい!(命令口調で)
小判:
なんだと!誰が亭主だと思ってるんだ!(怒鳴って)
小判:
夢の中まで亭主関白気取りですか!(呆れて)
小判:
ええい、こうなったら、
小判:
寿司屋なんてやめてやる!(ぷいとそっぽを向いて)
小判:
なんですって!(驚いて)
小判:
ワシはもっと大きなことをするんだ!(腕組みして)
小判:
そう、政治家になる!(突拍子もなく)
小判:
はあ?(開いた口が塞がらない)
小判:
三億円あれば、選挙資金もなんとかなるだろう。(真剣な顔で)
小判:
ワシがこの国を良くしてやるんだ!(熱弁を振るう)
小判:
…与太郎さん、ちょっと落ち着いてください。(困惑して)
小判:
私、そんなあなたについていけませんよ。(悲しそうに)
小判:
なんだと!お前はワシの足を引っ張る気か!(怒って)
小判:
足を引っ張ってるのは、あなたのその妄想でしょうが!(怒鳴り返して)
小判:
二人の喧嘩は、
小判:
もう、宝くじが当たった気でいるんですから、たまりません。(笑)
小判:
そのうち、与太郎さんが、
小判:
『もうお前とはやっていけん!』なんて言い出して、
小判:
お花さんが、『それなら、その三億円、慰謝料によこしなさい!』と。(笑)
小判:
その様子を見ていたご隠居さんが、
小判:
呆れて、与太郎さんに声をかけました。(やれやれと)
小判:
おい、与太郎、お花さん。(呼び止めて)
小判:
なんだい、ご隠居さん、ちょうどいいところに!(不満そうに)
小判:
ご隠居さん、聞いてくださいよ、この人ったら!(泣きついて)
小判:
まあまあ、落ち着きなさい。(なだめるように)
小判:
ところで与太郎、
小判:
お前が買ったその宝くじ、
小判:
いつの抽選だ?(冷静に)
小判:
え?いつって…(首を傾げて)
与太郎が懐を探る
小判:
たしか、来週の金曜日ですけど…(思い出すように)
小判:
そうかい。じゃあ、まだ抽選も始まってないじゃないか。(呆れて)
小判:
ええ、それが何か?(きょとんとして)
小判:
お前たち、まだ当たるかどうかも分からんうちに、
小判:
もう三億円で夫婦喧嘩してるんじゃないかい!(大笑い)
小判:
あ、あれ?(ハッとして)
小判:
あら、ほんとだわ!(顔を赤らめて)
小判:
二人は顔を見合わせて、
小判:
何とも言えない表情でございましたとさ。(笑)
パン!と手を叩く音
小判:
お後がよろしいようで。(一礼)
🎯 このコーナーの狙い
このコーナーでは、古典落語の普遍的な笑いの構造(例: 捕らぬ狸の皮算用、勘違いから生まれる滑稽さ)を現代のテーマ「宝くじ」に置き換え、いかに聞き手の想像力を掻き立て、情景を脳裏に浮かばせるかを実験します。登場人物の感情の起伏や、妄想がエスカレートしていく過程を丁寧に描写することで、人間の欲深さや夢見る心をユーモラスに描き出すことを狙っています。古典落語「時そば」や「寿限無」のような、日常の何気ない出来事や言葉のやり取りから、大きな笑いを生み出す手法を応用しました。
※ 本コンテンツはエンターテインメントおよび研究を目的とした創作台本です。実在の人物・団体とは関係ありません。
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