落語

スマホの向こうの家族団欒

2026.05.24 閲覧数: 747
編集長コメント:演じ方のコツ
EDITOR'S NOTE

このネタは「間」の取り方とセリフの抑揚が特に重要な構成です。声に出してテンポを合わせ、ボケとツッコミの呼吸を意識して演じることで爆笑を生み出せます。

落語・一席
高座本編
手拭: えー、皆様、本日はようこそ、(笑)
手拭: お運びくださいました。(笑)
手拭: わたくし、座布団亭手拭と申します。(笑)
手拭: 師匠の極上からは、お前は四番弟子なんだから、(笑)
手拭: 太鼓持ちくらいは上手くなれ、なんて言われてますけどね。(笑)
くすくす、と会場から笑い声
手拭: いやぁ、最近は本当に、世の中便利になりましたねぇ。(笑)
手拭: 昔は電話といえば黒電話、ダイヤルをジーッと、(笑)
手拭: 回してましたよ。(笑)
うんうん、と頷く観客
手拭: それが今じゃ、手のひらに収まるちいせえ板で、(笑)
手拭: 世界中の情報が、指先ひとつで飛び出すんですから。(驚)
手拭: 便利すぎて、人間の方が追いつかない、なんてことも、(笑)
手拭: あったりするもんでございますねぇ。(笑)
手拭: 先日、うちの長屋の若い衆の話でございますが…(笑)
ちゃぶ台を囲むような情景が浮かぶ
手拭: ある日の晩飯時でございます。(笑)
手拭: ご主人、奥さん、そして高校生の息子さんの三人家族。(笑)
手拭: 食卓には、奥さんの手料理がずらりと並んでおります。(笑)
美味しそうな匂いが漂うような
手拭: さて、いただきます、と手を合わせたものの、(笑)
手拭: 誰一人として、顔を上げようとしません。(驚)
シーンと静まり返る
手拭: 三人とも、ピカピカ光る板を覗き込んで、(笑)
手拭: 夢中で指を滑らせてるんでございます。(笑)
手拭: 奥さん、煮物の小鉢を差し出して、(笑)
手拭: ねぇ、あなた、この煮物、どう?(笑)
ご主人はスマホから目を離さない
手拭: ん? ああ、うまい、うまい。(笑)
手拭: 顔も見ずに、相槌だけは達者なもんで。(笑)
手拭: 〇〇(息子)、あんたも食べなさいよ、冷めちゃうわよ。(笑)
手拭: んー、後で。(笑)
スマホの画面から目を離さない息子
手拭: 後でって、今、目の前にあるでしょうに。(笑)
手拭: 会話といえば、スマホの画面に釘付けのまま、(笑)
手拭: 短い言葉がポツリポツリとこぼれるばかり。(笑)
箸が皿に当たるカチャカチャという音だけが響く
手拭: まるで、それぞれの世界に閉じこもって、(笑)
手拭: 違う宇宙で飯食ってるみたいでございます。(笑)
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴る
手拭: その日、息子さんの〇〇君が、(笑)
手拭: 学校から一枚の紙を持って帰ってきましてね。(笑)
手拭: PTAの役員決めのお知らせでございます。(笑)
手拭: その紙に、自分の名前と住所を、(笑)
手拭: 手書きで記入する欄がございました。(笑)
息子はスマホを操作しながら紙を見る
手拭: あれ?『役員』って、どう書くんだっけ?(驚)
目を丸くする息子
手拭: いつもスマホで変換してるから、(笑)
手拭: いざ書こうとすると、手が止まっちゃうんですな。(笑)
手拭: や、やくいん…役所の『役』に、会員の『員』だっけ?(困)
手拭: 鉛筆を握って、空中に字を書いてみたりして。(笑)
手拭: もう、あんたねぇ、そんなことも書けないの?(呆)
奥さんもスマホから目を離して、息子の手元を見る
手拭: お前もな、漢字くらい書けなきゃ困るぞ。(笑)
ご主人もスマホを一旦テーブルに置く
手拭: だって、スマホで『やく』って打てば、すぐ出るじゃん!(怒)
手拭: 書く必要ないんだもん。(怒)
手拭: 逆ギレしちゃって。(笑)
手拭: そんなこと言ったって、いざって時に困るのはお前だぞ。(笑)
手拭: ご主人がそう言いながら、(笑)
手拭: 自分のスマホを取り出して、(笑)
手拭: 『役員』って打って、字の形を確認してる。(笑)
奥さんも自分のスマホを取り出す
手拭: あら、そういえば私も、最近手書きしてないから、(笑)
手拭: ちょっと自信ないわねぇ。(笑)
手拭: 結局、三人でスマホを覗き込んで、(笑)
手拭: 『役員』という漢字を、(笑)
手拭: それぞれのスマホで確認しているんです。(笑)
スマホの画面が三つ並んで光る
手拭: しまいには、息子さんが、(笑)
手拭: ねぇ、お父さん、『員』って、横棒、何本だっけ?(困)
手拭: えーと、スマホだと一瞬で出ちゃうからなぁ。(笑)
手拭: 数えてみりゃいいだろう、ほれ。(笑)
三人がかりでスマホの画面を凝視し、横棒の数を数え始める
手拭: いやいや、もう、それ、スマホで見てる意味ないでしょうに!(笑)
手拭: 書いて覚える、ってのが、(笑)
手拭: 昔は当たり前だったもんでございますがねぇ。(笑)
手拭: 漢字を書く、という動作は、(笑)
手拭: 指先と脳みそを繋ぐ、大事な作業だったはず。(笑)
手拭: それが今じゃ、指先でスマホをタップするだけで、(笑)
手拭: 脳みそは、もう、お留守番でございます。(笑)
客席からどっと笑い声
手拭: 便利な世の中になったもんでございますが、(笑)
手拭: たまには顔を上げて、隣の人と話をするのも、(笑)
手拭: 良いもんでございますねぇ。(笑)
手拭: そして、紙と鉛筆を握って、(笑)
手拭: 自分の手で字を書いてみる。(笑)
手拭: きっと、新しい発見があるかもしれませんよ。(笑)
手拭: お後がよろしいようで。(笑)
パン!と手を叩く音。会場から大きな拍手

🎯 このコーナーの狙い

現代社会に深く浸透した「スマホ中毒」をテーマに、その滑稽さや、便利さの裏で失われつつある人間的な営み(コミュニケーション、手書き能力)をユーモラスに描き出すことで、聴衆に共感と笑い、そして少しの思索を促します。古典落語が世相を風刺したように、現代の時事ネタを落語という伝統芸能の形式で表現し、古典と現代の橋渡しを試みる狙いです。

※ 本コンテンツはエンターテインメントおよび研究を目的とした創作台本です。実在の人物・団体とは関係ありません。

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