落語
自信家の秘湯
2026.04.09
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落語・一席
高座本編
膝小僧:
えー、皆様、本日はようこそお運びくださいました(笑)
膝小僧:
わたくし、座布団亭膝小僧と申します(笑)
膝小僧:
師匠の極上からは、
膝小僧:
『お前はいつも、
膝小僧:
膝から崩れ落ちるような、
膝小僧:
頼りない声をしておる』と、
膝小僧:
お叱りを受けるばかりでございます(笑)
膝小僧:
ええ、しかし、
膝小僧:
これも修行でございますので、
膝小僧:
精一杯、努めさせていただきます(笑)
膝小僧:
さて、私、こう見えまして、
膝小僧:
若い頃から、
膝小僧:
どうも方向感覚が、
膝小僧:
人様とは少し違うようでございましてね(笑)
膝小僧:
地図を読めば読むほど、
膝小僧:
なぜか目的地から、
膝小僧:
遠ざかってしまうという、
膝小僧:
奇妙な特技がございましてね(笑)
膝小僧:
今日はそんな、
膝小僧:
『迷子』にまつわるお噺で、
膝小僧:
皆様を迷宮へ誘いましょう(笑)
客席からクスクスと笑い声
膝小僧:
ある日のことでございます(笑)
膝小僧:
町内でも評判の、
膝小僧:
『自信家のおやっさん』がおりましてね(笑)
膝小僧:
何事も、
膝小僧:
『ワシに任せりゃ間違いねぇ!』と、
膝小僧:
いつも胸を張っておる(笑)
膝小僧:
そのおやっさん、
膝小僧:
今日は隣町まで、
膝小僧:
大事な届け物を頼まれまして(笑)
膝小僧:
『任せとけ!ワシの地理勘は、
膝小僧:
地図より正確だ!(笑)』
おやっさんが胸を叩く仕草
膝小僧:
そう言って、
膝小僧:
元気よく出かけていきました(笑)
カンカンと軽快な足音
膝小僧:
ところがどうでしょう(笑)
膝小僧:
三十分も経たぬうちに、
膝小僧:
おやっさんは、
膝小僧:
見覚えのない森の入り口で、
膝小僧:
首を傾げております(驚)
膝小僧:
むむ?おかしいな(驚)
膝小僧:
隣町へ行く道は、
膝小僧:
こんなに木々が深かったか?(驚)
あたりを見回すおやっさん
膝小僧:
そこへ、
膝小僧:
通りかかった旅の行商人が、
膝小僧:
声をかけます(笑)
膝小僧:
旦那、何かお困りですか?(笑)
膝小僧:
おお、ちょうど良い!(笑)
膝小僧:
わしは隣町へ行きたいのだが、
膝小僧:
この道で合っておるか?(笑)
膝小僧:
隣町でございますか?(驚)
膝小僧:
旦那、それは逆でございますぞ!(驚)
膝小僧:
そこは、山を越えた先の、
膝小僧:
『忘れ谷』への道です(笑)
膝小僧:
なにぃ!逆だと!(怒)
膝小僧:
バカな!ワシの勘が、
膝小僧:
間違うはずがない!(怒)
膝小僧:
お前こそ、
膝小僧:
道を間違えておるのだろう!(怒)
行商人が困惑した顔で立ち去る
膝小僧:
行商人は、
膝小僧:
呆れたように去って行きました(笑)
膝小僧:
しかしおやっさん、
膝小僧:
『ふん、にわか者の言うことなど!(怒)』
膝小僧:
と、自信満々に、
膝小僧:
森の奥へと進んでいくのです(笑)
ザワザワと風が木々を揺らす音
膝小僧:
さらに一時間後(笑)
膝小僧:
おやっさんがたどり着いたのは、
膝小僧:
鄙びた温泉旅館の前でございます(驚)
湯気がもくもくと立ち上る
膝小僧:
おお!これは、
膝小僧:
隣町の、
膝小僧:
有名な温泉宿ではないか!(笑)
膝小僧:
やはりワシの勘は正しかった!(笑)
膝小僧:
しかし、
膝小僧:
隣町に温泉宿など、
膝小僧:
一つもございません(笑)
膝小僧:
おやっさん、
膝小僧:
旅館の番台に座る、
膝小僧:
おばあさんに尋ねます(笑)
膝小僧:
すみませんな、おばあさん(笑)
膝小僧:
ここは、隣町の温泉宿ですかな?(笑)
膝小僧:
へえ?(驚)
膝小僧:
旦那さん、
膝小僧:
隣町は、
膝小僧:
この山を三つ越えて、
膝小僧:
川を渡った、
膝小僧:
ずっと向こうでございますよ(驚)
膝小僧:
ここは、
膝小僧:
『秘境の湯』と申しまして、
膝小僧:
山奥の隠れ宿でございます(笑)
膝小僧:
な、なんだと!(驚)
膝小僧:
秘境だと!?(驚)
膝小僧:
ワシは、
膝小僧:
隣町へ、
膝小僧:
届け物があるんじゃ!(怒)
膝小僧:
あらあら、
膝小僧:
お気の毒に(泣)
膝小僧:
まあ、せっかくだから、
膝小僧:
熱いお湯にでも、
膝小僧:
浸かっていかれなさい(笑)
湯船から良い匂いが漂う
膝小僧:
おやっさん、
膝小僧:
結局、届け物は、
膝小僧:
隣町には届かずじまい(泣)
膝小僧:
しかし、
膝小僧:
せっかくの温泉ですから、
膝小僧:
『まあ、これも縁だ!(笑)』と、
膝小僧:
湯に浸かっておりました(笑)
ザブーンと湯に浸かる音
膝小僧:
すると、
膝小僧:
湯船の向こうから、
膝小僧:
見覚えのある顔が、
膝小僧:
湯気を掻き分けて、
膝小僧:
現れました(驚)
膝小僧:
おお!これは、
膝小僧:
届けるはずだった、
膝小僧:
向こうの旦那ではないか!(驚)
膝小僧:
おや、おやっさん!(驚)
膝小僧:
こんな山奥で、
膝小僧:
どうなされたのですか!(驚)
膝小僧:
まさか、
膝小僧:
届け物を持って、
膝小僧:
ここまで来られたのですか!?(驚)
膝小僧:
ふん!ワシの勘は、
膝小僧:
やはり正しかったのだ!(笑)
膝小僧:
隣町へ行くには、
膝小僧:
この秘境の湯を経由するのが、
膝小僧:
一番の近道だったのだよ!(笑)
膝小僧:
そう言って、
膝小僧:
自信満々に、
膝小僧:
届け物を渡すおやっさん(笑)
膝小僧:
旦那は呆れつつも、
膝小僧:
笑って受け取ったとか(笑)
膝小僧:
おやっさん、
膝小僧:
『ワシは近道を見つける天才だ!(笑)』と、
膝小僧:
それから毎度、
膝小僧:
遠回りをしては、
膝小僧:
不思議な場所へ、
膝小僧:
たどり着くようになったそうでございます(笑)
膝小僧:
迷子になりながら、
膝小僧:
結果的に事を成す(笑)
膝小僧:
これもまた、
膝小僧:
人生の迷子道でございますな(笑)
深く一礼
🎯 このコーナーの狙い
このコーナーは、「自信満々に間違う」という人間の普遍的な滑稽さをテーマに、共感を誘う笑いを狙っています。方向音痴のキャラクターが、自身の誤った確信に基づいて行動した結果、意図せず目的を達成してしまうという皮肉な展開で、聴衆に意外なユーモアと爽快感を提供します。
古典落語における「勘違い」や「思い込み」から生じる喜劇的要素、道中での登場人物とのやり取りの妙、そして最終的な「とんち」の効いたオチを現代的な感覚で再構築し、古典と新作の融合を図る実験的な試みでもあります。
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